７８Ｆ０５３３のコーナー（４）
CPLDで遊ぼう（３１）
オーディオクラフト工房（４２）

更新日：２００７年６月１１日

新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろう
究極の短波ラジオの第二弾が完成しました。前回のラジオは4.5MHzから9.9MHzでした。短波放送を楽しむにはもう少し上の周波数まで聴きたいものです。そこで今回は9.0MHzから15MHzまでを受信可能としました。2台を駆使してハッピーなBCLライフを楽しみましょう。それでは製作をスタートしましょう。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうの基本仕様
１）受信可能周波数は9000kHz～15000kHzとする。
２）短波チューナー部はワンチップICのスーパーヘテロダイン方式とする。
３）周波数はデジタルで直接選局する。周波数ステップは5kHzとする。
３）局発の周波数は自動追尾とする。局発と同調は同一制御とする。
４）周波数表示は4桁のLCDモジュールを使用する。有名局は局名も表示する。
５）予め59局の放送局をプリセットしている。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうの全体構成図
まずは全体の構成図を示します。
（新作デジタル選局SWラジオの構成図）
今回も大きく５つのブロックに分かれています。
①短波チューナーブロック
電子チューナーになっています。ICには定番のSANYOのLA1600を使いました。簡単な回路構成ですが満足のいく感度を得ることが出来ます。今回の制御は局発と同調を同じにしました。電源系は5Vからダイオードを2発通して3.4Vにしています。
②D/Aコンバータブロック
今回も苦労しました。5kHzの制御をするためにカットアンドトライを繰り返しました。今回も周波数自動追尾の究極の業を見て下さい。今回もたまたまですが5V以下の電圧で上限周波数の駆動が出来たためOPアンプは使っていません。高い電圧を掛ければ今回の上限周波数以上の同調も出来ますが周波数は不安定になって全く実用的ではありませんでした。これ以上の周波数については別の回路構成が必要と思います。
③CPLDブロック
短波チューナーブロックの局部発振周波数を計測してマイコンに送り込みます。今回は5桁分の周波数を計測しています。中間周波数の455kHzを引いているのでマイコン側での処理が簡単になります。電源は5V系ですが内部で3.3Vにしています。CPLDで計測しているので測定周波数は極めて安定しています。
④マイコンブロック
NECのuPD78F0533を使用しました。やはりピン数が多いと使いやすいです。容量も多いので大変満足しています。電源は5V系です。
⑤アンプブロック
今回は市販品のアンプ基板を使いました。皆さんのお好みで選択して下さい。いつものラジオの製作に使っているものでももちろんOKです。今回は5V系で使用しました。モノラルですのでこれで充分ですね。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうの短波チューナーブロック
短波チューナーブロックはSANYOのLA1600を使いました。結構全ての周波数帯域で安定した感度を保っていましたので、今回の製作にはピッタリですね。局発と同調含めてバリキャップは複数使用の制御としました。制御電圧に対して周波数がほぼリニアになります。周波数の設定を素早くするために3種類の傾き曲線を使用して電圧を駆動しています。
（SWチューナーブロック回路図）
AMに比べると同調の部分はあまり神経質にならなくても良いと思います。局発と同調は同じ電圧で制御しています。今回も局発がどれほどの精度で制御できるかがポイントになります。
（短波チューナーブロックの局発電圧と周波数相関）
私の環境でのデータなので皆さんが製作される場合は充分に調整をお願いいたします。コイルのコアの位置によっても周波数と電圧は異なりますので。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうのD/Aコンバータブロック
マイコンからは簡易のD/Aコンバータで制御します。今回は局発と同調を13bitで制御します。電圧変動に対して周波数変動が大きいので、細かい周波数を制御するためには細かい制御が必要になります。抵抗で構成していますのでそれほどの精度は出ていないと思いますが一応細かい制御はできます。前回と同じく自動追尾のために一部回路を工夫しています。周波数がどうしても合わないところは故意に抵抗を制御して合わせ込んでいます。マイコンが自動にやってくれますので少し待つだけでOKです。
（13bitD/Aコンバータ回路＋微調整付き）
今回も苦労した部分はこの微調整駆動です。周波数はほぼ±1kHzで合わせることが出来ます。しかしながら周波数によっては全く合わない部分が生じます。この部分を強制的に合わせるために強制的に抵抗を調整します。上図中のD1-D2間、D2-D3間、D3-D4間を強制的に抵抗値を下げて電圧を微調整します。電圧が合わないパターンは色々あるのでこの3bit（8通りの制御）で全て合わせることに成功しました。
（微調整回路）
3bitの調整制御はフォトリレーを使います。それぞれのビット間の1.5kΩの抵抗をこのフォトリレーでショートさせて全体の電圧を調整します。同様のことをする方法は色々あると思いますので皆さんも考えてみて下さい。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうのCPLDブロック
今回もCPLDは周波数の計測と中間周波数の減算しかしていません。その結果を18bitのバスで出力します。ビット数が増えただけで方式は全く前回のものと同じです。
（CPLD内部構成図）
（CPLDのピン接続）
局発周波数をCPLDで計測するために信号増幅回路が必要です。
（入力信号増幅回路）
この回路がないとCPLDが正しく計測をしてくれません。またCPLD側の電圧に合わせる役目もしています。今回は出力にセラコンを付けました。付けるとなぜか周波数が安定したように思いました。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうのマイコンブロック
今回もuPD78F0533のボードを使います。
（マイコン側の電源とGNDの接続）
LCDモジュールも前回と同じものを使います。4行表示出来るので大変便利です。今回はバックライトのLEDも点灯してみました。5Vに直接つなぐと電流を食うので56Ωを直列に入れて電圧を掛けています。暗い所でも周波数が確認出来て大変便利です。
（4行表示LCDモジュール回路）
（LCD表示の内容）
LCD表示は上図としました。設定周波数は1行目の右に表示します。局発の周波数は2行目に表示します（中間周波数分は減算されています）。周波数は自動追尾ですのでこの周波数が設定周波数に合うように（±1kHz）電圧を自動調整します。2行目の左側にはその電圧をマイコンが設定する値を表示します。デバッグ用でですので気にしないで下さい。さらにその右横にはアルファベット表示が出るときがあります。これは周波数がうまく合わない時、13bitのD/Aコンバータを微調整している状態を示しています。1行目の左側には予めプリセットしてある周波数の番号を表示します。（プリセット操作した時のみ）
3行目と4行目には放送局の局名と受信可能な時間を表示します。（最新版を記しているつもりですが、短波の周波数は季節により異なることがありますので充分注意して下さい。また記してある周波数の局が全て受信出来てはいませんので、参考程度として下さい）
（操作スイッチの回路）
操作スイッチは4個使います。SW1、SW2が周波数を5kHzごとにアップダウンします。SW3、SW4はプリセットしてある周波数選択ををアップダウンします。
（チューニング表示用LED回路）
チューニングの状態が見れるように3個のLEDを付けます。局発の周波数が設定周波数に合うように常時測定周波数を計測して高ければ低いほうへ、低ければ高いほうに周波数が合うように調整しています。その状態をこのLEDで見ることが出来ます。
（ポート割付と設定）
ポートの接続は多いですが難しいことは全くありません。配線が込み合いますので注意して配線して下さい。前回よりはあきポートが多いです。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうのアンプブロック
今回もラジオとするためにアンプを内蔵しました。スペースの関係からスピーカは外部に付けましたが大変便利です。アンプは市販のアンプ基板を使用しました。5Vで駆動出来るものなら何でもOKです。今回は基板上にLM386がのっているものを使用しています。キットですので回路図は省略させて頂きます。
電源部はあえて記載しませんでした。皆さんで工夫してみて下さい。毎回言ってますがラジオにはスイッチング電源は禁物ですので、注意して下さい。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうの完成までの姿
それでは完成までの姿を見て頂きましょう。古い製作を改造などしているので使わない穴も結構あります。
（アナログ回路を集めたブロックとしてひとつのケースに入れました）
（正面はボリューム、背面は電源ジャック、接続端子などです）
（デジタル回路部分を中心に集めました）
（正面は同調表示、背面は電源ジャック、接続コネクタなどです）
（LCD表示部です。操作ボタンも付けました）
（ラジオ日経受信中です）
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうの全VHDLソースコード
私と同じ製作をされる方、または勉強される方のために全ソースコードなどプログラム一式を公開いたします。フォルダごと圧縮しましたのでそのままもってって下さい。
全ソースコードはこちらです。
新作デジタル選局短波ラジオⅡを作ろうのマイコンソースファイル
ソースファイル一式はこちらからダウンロードして下さい。フォルダごと圧縮しています。全ファイルが入っています。ライタで書き込みする実行ファイルも含まれています。
皆さんいかがでしたでしょうか。ふたつの短波受信機を駆使して4.5MHzから15MHzの周波数をカバーすることが出来ました。ダイレクトで周波数を設定出来ますので簡単に海外局を受信することが出来ます。自作の受信機で地球の反対側から飛んで来る電波を受信出来た感激を皆さんも体験して下さい。
これからも「ＮＥＣ７８Ｋ０/Ｋ０Ｓマイコン開発室」はどんどん楽しくなります。

ＮＥＣ７８Ｋ０/Ｋ０Ｓマイコン開発室へ戻る